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移住者インタビュー

豊かな自然の中で人と人とをつなぐ農業を。

小野裕次さん・入倉眞佐子さん

小野裕次さん
入倉眞佐子さん

出身地:東京都・長野県

移住年:2012年

現住所:阿波市

職業:農園経営

取材年月:2016年2月

大学時代から有機農業を志し、2012年に阿波市で農園を開園した小野裕次さんと入倉眞佐子さん。土づくりから真摯に取り組む姿勢でつくられる美味しい野菜たちは、国内外のさまざまな人と人とをつなぎ、ますます広がっていこうとしています。

理想の野菜づくりができる土地を探して。

小野さんは有機農業を志して、さまざまなところで野菜をつくってきたそうですね。

小野裕次さん

小野さん:東京農業大学在学中から有機農業をやりたいと思っていて、ずっとその夢を追いかけてきました。その間にはバックパッカーとしてアジア放浪の一人旅など、いろいろと紆余曲折はありましたが、大阪や奈良、香川を経て徳島に来たのは2001年のことです。最初は吉野川市にある農業法人で働いていたんですが、やはり自分の理想とする野菜づくりを追求していきたいと思って独立、縁あってこの阿波市で2012年に「小野農園」を開園しました。

入倉さん:私は東京農業大学を卒業してから、広島の自治体でポルトガル語とスペイン語担当の外国人相談員として働いていました。そこでは移住労働者の支援を行っていたんですが、20年以上にわたって彼らと接しているうち、自分の働き方とポジションに疑問を持つようになって。そんなとき、ずっと園長が有機農業を続けていたことを友人のブログで知り、彼が理想とする野菜づくりを一緒にやっていくため、思いきって2011年に徳島への移住を決意しました。

それまで暮らしていた吉野川市ではなく、阿波市を選んだ理由を教えてください。

入倉眞佐子さん

小野さん:大学では探検部に所属していたこともあり、登山や川下り、サイクリングなど、アウトドアスポーツも好きなんですが、最初に訪れたときから「徳島は何て豊かなところなんだろう」と思っていました。山も川も海もありますし、身近に自然が感じられる土地で野菜づくりをしたかったんです。いろいろな土地を農園のために探しましたが、阿波市は平地が多く、非常に農業が盛んなところですし、夢を実現するにはぴったりの場所でしたね。

入倉さん:当時の私は今よりも農業のさまざまな事柄について覚えることに必死で、農園を構える場所にまで思いが至りませんでした(笑)。でも、この家を選ぶにあたっては、園長がいろいろと考えていたことをよく覚えています。たとえば「納屋がないと駄目」「井戸があった方がいい」など、立地だけではなく、農家として必要な条件を満たすところを探していました。

昔の農家らしい立派なつくりの古民家ですが、この家でないと駄目だったのですね。

小野裕次さん・入倉眞佐子さん

小野さん:そうですね。ここは不動産屋さんに紹介された家なんですが、築80年くらいの古い農家なので、農作業に必要な条件がすべて整っているんですよ。東日本大震災のボランティアに参加した経験から、地域にとってどれだけ水が大切なものかを痛感したこともあり、どうしても井戸はほしいと考えていました。それから、農業に欠かせない道具や機械を収納したり、収穫した野菜を保管する納屋など、さまざまな季節ごとの作業をするスペースも欠かせません。

入倉さん:農業体験希望者の受け入れや野菜を使った教室などが行えるのも、昔ながらの農家としてつくられたこの家のおかげ。園長が理想とする野菜づくり、そして、人と人とをつなげていくための拠点となるこの土地と出会うことができて、本当に良かったと考えています。

おおらかな人の温かさに助けられています。

小野さんたちが追求している有機農業とは、どのような取り組みなのでしょう。

阿波市の農園

小野さん:自然の巡りや四季の恵みを楽しみ、旬を尊ぶ野菜づくりです。そのためには最初に土づくりから行っていきます。私たちの土づくりは約3年かかるんですよ。微生物やミミズなどの力を借りながら、まず畑に麦を植えて根が土を耕してくれるのを待ち、その次に大豆を植えて土を肥やし、最後に水田にして米をつくる。この約1年半かかるサイクルを2回繰り返して、やっと野菜をつくるためのベースが整います。それから農地ごとの適性に合った野菜を植えていく。一見、遠回りのように見えますが、土づくりから始める方法がベストだと思っています。

入倉さん:場所によって日照条件も違えば、水はけの良し悪しも異なります。土地にも個性があるんですよ。麦、大豆、米を植えて土の状態を少しずつ整えていきながら、そこを3年かけて見極めていく作業でもあります。園長が信頼できるクオリティーまで土壌の状態が達した畑ほど、土の中に棲む虫が多くなるので、耕していくと鳥たちがどんどん寄ってくるようになるんです。小野農園が開園したのが2012年ですから、土づくりの準備が整ったのは本当に最近ですね。

土づくりに約3年!それだけの年月が野菜づくりの準備にかかっているとは…。

入倉眞佐子さん

小野さん:小野農園の開園当時に借りた農地は耕作放棄地や休耕田なので、土地の力を回復するためには時間が必要でしたね。開墾作業からスタートするところも多かったんですが、正直に言えば、そういう荒れ果てた土地を耕して肥えさせていく方が燃えるんですよ(笑)。美味しい野菜をつくるためには、コツコツと土づくりからスタートするのは当たり前だと思っています。

入倉さん:それぞれの旬を追いかけていく小野農園は、多品種多品目栽培をしているので、いわゆる農閑期というものがありません。麦、大豆、米、さまざまな野菜やハーブ類などを合わせて約100種類近くの農産物をつくっていますが、今のところ年間を通じて園長と私の二人が育てられる種類としては、耕すことのできる土地を含めて、このくらいが限界かなと考えています。

農園を始めるにあたり、阿波市の人々とはどのような関係性が生まれましたか。

小野裕次さん

小野さん:土づくりから始めたため、野菜が収穫できるようになるまでの期間は収入がありませんでした。でも、農機具も農地も足りなかったスタート時期を支えてくれたのは、近くで農業をしていた方たちです。移住してきた私たちに快くトラクターを貸してくれたり、自分たちが使っていない農地を提供してくれたり…。これは本当に有り難かったですね。今まで農業をやってきた土地ではいろいろなトラブルもあったんですが、阿波市ではそういう嫌なことが一つもなかったんです。

入倉さん:農業に挑戦したばかりの頃は、地域の人と接するのが少し怖くて。どうしても農業は自分の経験が大きいので、一人ひとりの指示が違ったりするんですよ。誰に従っても角が立つようなこともありました。でも、阿波市の方々はそういうギスギスしたところがないんですね。わからないことは嫌味なく教えてくれますし、畑に水が足りないときは「うちの水を使って」と助けてくれたこともありました。そういうおおらかな温かさには本当に救われています。

小野裕次さん・入倉眞佐子さん

長年培った有機農業の力を次の世代にも。

小野農園では野菜をつくるだけではなく、さまざまな活動を行っていますよね。

入倉眞佐子さん

入倉さん:そうですね。開園する前から温めていた計画の一つとして、国籍にこだわることなく、広くファームステイの希望者を受け入れていきたいという考えがありました。そこで1971年にイギリスで始まった“WWOOF(World Wide Opportunities on Organic Farms)”に加盟。これは世界50ヵ国以上に広がる有機農場を主体としたファームステイの取り組みで、そこで学んだり、手伝いたいと考えている若者とのマッチングを行う国際的な組織です。今まで約40名ほどを各国から受け入れてきたこともあり、最初は外国人を見て怪訝な表情をしていた近所の方からも、最近では「小野農園に来た子やな」とすぐにわかっていただけるようになりました(笑)。

小野さん:“WWOOF(World Wide Opportunities on Organic Farms)”同様、開園当初から行っている取り組みとしては「百姓塾」があります。土づくりの一環で必ず大豆を植えるので、その作付けをはじめ、味噌や豆腐に加工するまでを学んでもらうというものです。普段、お金を出して購入する味噌や豆腐がどのようにつくられるのかを体験してもらうワークショップには、阿波市はもちろん、県内全域からさまざまな年代の方が参加されています。豆腐マイスターや食育・豆腐インストラクターの資格も取得しているので、こうした「百姓塾」のような取り組みもそうですが、大豆の力をあらためて見直すための活動は、もっと力を入れていきたいですね。

農産物を使って人と人とをつなぐ活動に力を入れているのはどうしてですか。

小野裕次さん

入倉さん:「生命と人と人とつながり」こそが一番の宝だと思っているんです。たとえば、特定非営利活動法人(NPO)アライブラボの『キッズファーマープロジェクト』や阿波市のキッズ野菜ソムリエ育成事業に参加しているのも、野菜をもっと身近に感じてほしいから。「食育」という言葉もありますが、畑でどうやってつくられているのか、そして、それがどんなに美味しいものなのかを知ってもらいたいんですよ。阿波市の学校給食センターにも野菜を納品しています。

小野さん:有機農業に関心がある人をもっと増やしていきたいと思っています。「人と人とのつながり」を実践していくにあたってはパートナーである入倉の力が大きいんです。野菜をつくることはできても、それ以外の営業や販売が苦手なため、本当に助かっています。彼女の人を見る目や行動力のおかげで、小野農園の活動にもさまざまな可能性が広がってきたと考えています。

入倉さん:ほかにも、阿波市観光協会と阿波市ケーブルテレビネットワークが制作している『阿波ベジもりもり』という番組では味噌づくりを紹介したり、徳島市で月に一度行われる『とくしまマルシェ』に参加したり。小野農園の小麦を気に入っていただいてパンづくりに使っていただくお店もあります。インターネットで全国のご家庭へ旬の野菜を届ける取り組みも進めています。私たちがつくった野菜が多くの人とのつながりを生んでくれているのは嬉しいですね。

これから小野農園が目指していること、阿波市への思いを教えてください。

阿波市の農園

小野さん:“WWOOF(World Wide Opportunities on Organic Farms)”のようなファームステイを含めたグリーンツーリズムを通して、有機農業の面白さや大切さ、野菜の美味しさをもっと発信していきたいですね。地域の老若男女が交流する拠点の一つになっていけたらと思っています。

入倉さん:まだまだ始まったばかりですが、阿波市でゼロからつくりあげてきた小野農園の方法論を次の世代へ伝えていきたいんです。良いものをつくれば、必ず誰かが見てくれている。徳島県や阿波市はそういうところ。園長が30年以上にわたってこだわってきた有機農業を広めるには、いろいろな人の力を借りながら、農と食と人という三つの要素をつないでいきたいですね。

小野さん:阿波市は農業をやりたい人にとっては本当に良いところだと思います。自治体も周囲の人も応援してくれますし、何より農業をしている方がいっぱいいて、お互いに切磋琢磨している素晴らしい環境です。日本のみならず、いろいろな国から多くの人に来てほしいですね。

小野裕次さん

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